アメリカ法人の財務諸表にはレベルの違いある。その差異とは

アメリカの財務諸表には「コンピレーション」「レビュー」「監査」および「PCAOB監査」の4つがあります。クロスオーバーM&Aのデューデリジェンスに際しては、より正確で信頼性の高い監査を依頼することが不可欠でしょう。

アメリカの財務諸表には大きく4つのレベルが

アメリカの企業を対象としたクロスオーバーM&Aをプランニングする際には、「アメリカにおける法人向けの財務諸表は4つのレベルがある」という点を覚えておきましょう。

1つ目は「コンピレーション」、2つ目が「レビュー」、3つ目が「監査」、そして4つ目が「PCAOB監査」です。

それぞれの特徴を理解しておくなら、デューデリジェンスの効果性を高めることができるでしょう。

また、最終契約が完了した後になって「提出された書類と企業の実態に甚だしい乖離が見られる」というトラブルを避けることもできるはずです。

コンピレーション

コンピレーションとは、公認会計士が実施するもっともシンプルな財務諸表の作成業務です。

ただし、書類の作成に当たって参照するのは企業から提供された書類のみであり、記載されている情報の正確性に関して別途確認作業を行うことはないという特徴があります。

そのため、公認会計士は財務諸表に「正確性は保証されていない」という旨の文面を記載しています。また、詳細な監査を実施していないということが記載されているケースも珍しくありません。

加えて、コンピレーションでは財務諸表を行った企業との関係性において、公認会計士の独立性が必ずしも確保されているわけではありません。ですから、コンピレーションは情報の正確性をそれほど重要視しない第三者へ提出される書類であるという点に注意しましょう。

レビュー

レビューとは、公認会計士がビジネスや金融取引に必要とされる情報を中心として確認を行い、財務諸表を作成する作業のことです。

企業に対する金融機関の与信判断に際して、レビューを実施することも少なくありません。公認会計士はクライアントから提出された財務関連の書類を精査し、疑問点に関しては直接質疑応答を実施して、情報の正確性を確認していきます。

公認会計士はクライアントである企業から完全に独立した立場にいなければならず、その点を財務諸表にも明記します。

レビューの法的な責任者は企業の経営者であり、このプロセスを実施することで、企業は作成している財務諸表が限定的ながら正確であるという評価を手にすることが可能です。

監査

監査とは、会社の債権者やM&Aの交渉先企業へ提出することを念頭に置いて実施される、高度な財務の精査プロセスを指します。

公認会計士は独自の監査プランを作成し、その内容に沿って作業を進めていきます。

財務書類の正確性を精査することに加えて、取引先の帳簿や金融機関の口座残高などもチェックする必要があります。さらに、請求書の記載内容と実際の取引データが合致しているかもチェックしていくことでしょう。

少しでも不正確な点が見られるなら、経営陣を対象とした詳細な聞き取り調査が行われます。

こうした厳しい確認作業が完了すると、財務諸表の作成が行われます。

担当する公認会計士は、当然ながら企業から完全に独立した状態でなければなりません。

最終報告書では、経理・財務に関連した各種資料がいずれも正確であることを保証するという文面が明示されます。

PCAOB監査

PCAOBとは、投資家保護の目的で設立された米国の上場企業会計監視委員会のことです。

PCAOBの目的は、企業のレビューや監査などを実施する監査法人の業務を精査することで、監査の結論が本当に適切だったかを確認し、同時に業務クオリティーの向上を促すことです。

PCAOBは豊富な経験を有する公認会計士のチームを組織し、各監査法人が担当した案件の再監査を実施します。これがPCAOB監査です。1年から3年に1度の頻度で実施されるPCAOB監査では、監査法人および担当した企業の内部情報をすべて公開する必要があります。

それぞれの差異

コンピレーションとレビュー、監査はいずれも監査法人や公認会計士が請け負う作業であるのに対し、PCAOB監査は国の独立した委員会が監査法人を対象として実施するという点で大きな違いがあります。

とは言え、PCAOB監査の中で財務諸表に不正確な点が見つかった企業は当然、行政指導の対象となるので注意が必要です。

コンピレーションは「テスト監査」とも呼ばれるほど簡易的なものであり、正確性に関する保証が基本的にありません。また、レビューによって保証される書類の正確さは「限定的」という但し書きが付いていることも覚えておきましょう。

財務諸表の正確さや真実さに関して「総合的」もしくは「合理的」な保証を求めるのであれば、監査を実施するのが適切です。

信用度の高い資料でデューデリジェンスを

M&Aでは、デューデリジェンスに用いる資料の正確性が何よりも重要です。

ですから、アメリカ企業とのクロスオーバーM&Aを計画しているなら、デューデリジェンスに際して必ず監査を実施してもらいましょう。

また、PCAOB監査が比較的最近実施されたのであれば、その結果を参照することも大きな助けとなるはずです。

アメリカ進出をもっと簡単に…「ターンキーM&A」

今も人口増加を続けるアメリカ市場は大変魅力的。日本からのアメリカ企業M&Aも加速を続けています。

しかし国際間の取引には国内では想像できないようなリスクも存在するため、大きなハードルを感じている企業も少なくありません。「ターンキーM&A」は、そんな国際間ギャップを低減し日本企業のアメリカ進出をより身近なものとします。

海外進出時の異文化リスク、人材リスク、継承リスクなど様々な問題を低減します。
今後の事業戦略の選択肢のひとつとしてお留め置きください。