中国M&A市場の現在とこれから

中国では、コロナや政府の規制強化などの影響を受け、経済的なダメージが広がっています。アウトバウントM&A市場も低迷しており、政府と企業が一体となって政策を打ち出したとしても、回復までには時間がかかると見られています。

コロナ禍において中国のM&A市場は低迷

コロナによる影響により、多くの国が大きなダメージを受けました。その中でも、中国ではコロナが発生した2020年に国全体が経済的なダメージを受ける事案が複数起こりました。

2020年の中国では、教育工学分野において国が規制を制定して取り締まりを強化した他、国内大手の不動産コングロマリット企業の恒大集団が企業危機を迎えて債務不渡りを出して、不動産業界全体に激震が走りました。こうした影響を受け、中国国内では企業に対する不信が広がり、M&A市場も低迷の傾向が起こっています。

そうした中、国としての経済的ダメージを最小限に抑えるため、中国政府は積極的に国内の規制を強める対策を打ち出しました。しかし、残念なことに、こうした政策がM&Aの低迷にさらなる拍車をかけてしまったのです。2021年におけるM&A市場は過去5年間の中で最も低迷しており、特にアウトバウンドタイプのM&Aは、コロナ前と比較すると約5分の1にまで縮小しました。仮に中国政府がアウトバウンドM&Aを推進する政策を打ち出したとしても、一朝一夕に効果が出るわけではありません。そのため、2022年においても、中国のM&A市場はアウトバウンドM&Aを中心として、低迷した状態が継続すると予想されています。

中国のM&A市場を活性化する鍵とは?

そんな中国のM&A市場にも、将来的には明るい兆しが見える要素はたくさんあります。例えば、世界的に経済成長率が低下しているという事実です。諸外国と相対的に比較した場合、中国のM&A市場の低迷は、それほど大きなマイナスダメージに繋がらないと考える専門家は少なくありません。

さらに、コロナの影響によって世界各国でボトルネック減少が起こっており、資金調達にかかるコストが上昇し続けていることも、M&A市場の活性化につながると考えられています。特にサプライチェーンのネットワークに関連する企業にとっては、こうしたコロナ回復期の時期だからこそ、高条件でのアウトバウントM&Aが可能となることも期待できます。

コロナによるダメージを受けた業界や分野は、多岐に及びます。これは中国でも同じです。しかし、中国国内のエネルギー産業においては、コロナ禍においてもプラスの成長率を記録しました。これは、エネルギー産業全体の生産量が増えたことや、原材料のコストが低下したことによる恩恵と考えられます。M&A市場の低迷を救う鍵となるのは、もしかしたらエネルギー産業なのかもしれないと考える専門家もいます。

中国のM&A市場の活性化を阻む懸念材料

中国の経済低迷やM&A市場の低迷に関して、長期的に悲観的な見解を示している専門家は、それほど多くありません。しかし、恒大集団の債務不渡りの結果、行われた政府主導の規制強化を目の当たりにして、次は自身の業界や分野がターゲットになるのではないかと不安を抱える企業はたくさんあります。すでに、教育業界やテクノロジー業界においては、政府が強化する規制や課題との間で摩擦が生じており、今後の行方に注目が集まっています。

コロナが完全に収束していない昨今においては、各国が国境を超えた人やモノの移動を制限しており、中国も例外ではありません。そのため、中国国内の投資家がグローバルな規模の投資において機会損失をしたり、ビジネスチャンスを逃してしまったりなどの影響も出ています。

さらには、アメリカをはじめとする諸外国からの圧力も、M&A市場の低迷脱却を難しくする要因の一つです。これはコロナ前から始まっていたことで、貿易や投資、技術の輸出入において、アメリカ側が選択的なデカップリングを実行するリスクは、コロナ回復期においても依然として高いままの状態が続いています。

こうしたさまざまな懸念材料を克服し、回避できる策を見つけながら、政府と企業が一体となって中国の経済政策を推し進めることが、M&A市場の回復につながると考えられています。