企業買収におけるPERとPBRとは

企業買収のタイミングを判断するうえで役立つのが「PER(株価利益倍率)」と「PBR(株価純資産倍率)」という株価に関連した2つの指標です。

それぞれの数値が持つ意味を知っておくことで、M&Aを仕掛けるチャンスを見極めることができるでしょう。

M&A成功のカギは事前の分析にある

M&Aは「タイミング」が重要と言われています。売り手側の企業であれば、自社の業績が好調な時や業界再編の動きが出ている時にM&Aを行うことで、売却に伴う利益を大きくすることができるでしょう。

一方、買い手側の企業としては、自社のキャッシュフローが安定しており、M&Aを行うことで大きなシナジー効果が期待できるタイミングを選ぶ必要があります。

この点で重要になるのは「事前の分析作業」です。

企業買収は膨大な資金が動くディールであり、その成否によって業績が大いに伸張することもあれば、経営が大きく傾いてしまうということもあり得ます。ですから、M&Aのスキームをスタートさせる前に、買収対象として本当に適切な企業かどうかを精査することは不可欠です。

その際にカギとなるのが「PER」と「PBR」という2つの指標データです。

PERとは?

PERとは「Price Earnings Ratio」の頭文字を合わせた表現であり、日本語では「株価利益倍率」と表記されます。

PERは企業の株価(M&Aにおける譲渡価格)を1株当たりの純利益額で除算することによって算出できます。言い換えれば、「株式の時価総額」と「純利益額」の比較となります。

例えば、株価が1,500円、純利益額が3億円、発行済み株式が300万株である場合、1株当たりの純利益額は100円となります。続いて、株価を1株当たりの純利益額で除算すると、PERは15となるわけです。

PERの値が高ければ、純利益額に対して株価が割高になっていると言えます。対照的に、PERの値が低いということは株価が割安であるということですから、株式を購入する良いタイミングと判断する投資家は多いでしょう。

とは言え、PERが高いこと自体は決して悪いことではありません。むしろ、業績が好調だったり、近い将来さらなる飛躍が期待されていたりする企業に関しては多少高値でも株を購入したいという投資家が多いため、取引が活発になり、必然的にPERが高くなる傾向にあるのです。

PBRとは?

PBRは「Price Book-value Ratio」の頭文字を合わせた表現で、日本語では「株価純資産倍率」となります。

PBRは企業の株価を1株当たりの純資産額で除算した値のことです。言い換えると、「株式の時価総額」と「純資産額」の比較となります。

例えば、株価が1,500円、企業の純資産額が10億円、発行済み株式が100万株である場合、1株当たりの純資産額は1,000円となります。続いて、株価を1株当たりの純資産額で除算した結果、PBRは1.5となるわけです。

上記は、純資産の1.5倍の値段がつけられているということです。つまりPBRは低い方が割安と判断されます。

PBR=1というのは「純資産額そのまま」の価値という状態ですので、底値の指標としても使われます。

PERとPBRでみる買収企業の判断基準

株式投資の世界ではPERに関しては、目安となる数値が「15」と言われています。投資したお金を15年で回収できる、つまり年間利回りで言い換えると利回り6.7%ほどということになります。

M&Aにおいては、業界により目安が異なったり資産運用以外の要素も多い為、一概にこれだけで判断はできませんが、投資効率という側面からの指標としては大いに参考とすべき数値となります。

一方、PBRに関しては「1.0」が基準です。まずは、1.0をベースにそこからどれだけの付加価値がなされているかを加減するといった要領です。

通常企業は、純資産=単純に現金化した場合より付加価値がついています。技術・販路・ブランド・システム・人材など金銭換算できない価値を評価し「1.0」に加算してゆくのです。

まれにPBRが1.0よりも大幅に低い場合がありますが、これは時価総額よりも企業の純資産額の方が多いということになり、株主としては企業運営を継続するよりも、会社を解体して保有している資産を分配したほうが儲かるという状態になっています。その会社は市場から評価されていないということになりますが、単純に「割安」の場合もあれば「付加価値を上回るリスクが内在している」という可能性も考えられます。

このように一般に株式投資の指標として用いられるPERとPBRを、M&Aの企業調査で用いることは「それのみで判断はできないが」それで有効なひとつの指標となりえます。

同業他社の水準をみる

PERやPBRの水準は、業種や産業に応じてかなりの違いがあります。

例えば、IT分野ではPERが総じて高いのに対し、原油・燃料に関連した分野ではPERが全体的に低い傾向が見られます。(つまりIT分野では「成長」という付加価値を評価し、現状の収益性より高値がつけられているということです。)

ですから、数値だけを見てその企業を評価しきれるものではありません。

より確実性の高い評価をしたいのであれば、同じ業界の、できるだけ規模・エリアが類する同業他社のPERやPBRと比較することが役立つはずです。

データの推移をみる

買収の対象となっている企業に関して、PERやPBRの値がこれまでどのように推移してきたかを確認すべきです。

(ただしこれは公開企業に限られます)

現在の数値では判断基準をクリアしているものの、ここ数年で急激に悪化している場合などはその原因究明が要されますし、もう少し様子を見るという判断をしなければならないかもしれません。

反対に株価が下がってPERの数値が低くなっていても、純利益は順調に推移していて大きな問題も無いのであれば、これは単純に買い時と判断できます。

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