海外M&Aのデューデリジェンスで気を付けるべきこと

海外M&Aのデューデリジェンス(DD)では、相手企業が日本国内ではなくて海外にあるため、国内M&Aよりも気を付けるべき注意点は多くなります。

リスクを理解しながら詳細な調査を行うことで、失敗しにくい海外M&Aの実現が可能となります。

海外M&Aのハードルは高い

海外M&Aは、日本国内の企業同士が行うM&Aと比較すると、すべてのプロセスにおいて難易度が高くなります。

その理由は、国ごとにビジネス文化が異なる他、価値観や法制度も異なるためです。

そのため、海外M&Aにけるデューデリジェンス(DD)のプロセスでも、どこまでをリスクととらえるのかという点が企業ごとに異なるだけでなく、国によっても異なります。

その結果、ズレが誤解が生じやすいのです。海外M&Aのデューデリジェンスにおいては、どんな点に気を付けるのが良いのでしょうか。

気を付けること その1「調査の深度」

海外M&Aのデューデリジェンスにおける1つ目の注意点は、調査内容が浅くなりがちという点があります。

一般的なデューデリジェンスのプロセスでは、法務や財務、税務やビジネス、人事やITなど、幅広い分野において多方向から調査を行います。

問題点やリスクを洗い出すことによって、そのM&Aが妥当かどうかを見極める判断材料となり、将来的なトラブルを未然に防ぐことにもつながります。

そのプロセスは、海外M&Aでも同じです。

しかし海外M&Aの場合には、国が違うという点で、どうしても詳細なデューデリジェンスが難しくなってしまうことが少なくありません。

各分野におけるデューデリジェンスは、それぞれハイレベルな専門知識を持つ弁護士や司法書士などが担当して行います。

しかし、浅い調査しか行わずに必要な情報を収集できないことは少なくありません。

デューデリジェンスの際には、こちらのニーズや希望をできるだけ細かく調査機関へ伝えておくことによって、契約後のトラブルを最小限に抑えることができます。

気を付けること その2「社風を重点的に」

デューデリジェンスにおける2つ目の注意点は、その企業の社風や風習、経営上のルールなども十分に調査する必要があるという点です。

海外M&Aが失敗しやすい原因の一つに、M&A後に社員のモチベーションが下がってしまったり、経営に苦労するという点があります。

ガバナンスの低下や社員の流出などのトラブルは、海外M&Aにおいて現地のルールや文化、考え方を考慮せずに契約をすすめてしまうことで起こるトラブルです。

M&Aにおいては買う側と売る側とがあるわけですが、売る側の企業にはすでに経営者がいて、働き方や経営方法にルールが根付いていることは少なくありません。

買う側は、そうしたソフトな面もすべて受け入れることになりますが、海外M&Aのデューデリジェンスでは、そうした点が着目されないことは多いのです。

もしも海外M&A後に売る側の企業ルールが買う側の経営方針と大きく異なった場合、売る側にとっては社員のモチベーションが下がったり、社員流出のリスクが高くなります。

また買う側にとっても、海外M&Aによるメリットが小さくなり、結果的にその海外M&Aが失敗に終わる可能性もあります。

気を付けること その3「法制度の違い」

海外M&Aデューデリジェンスにおける3つ目の注意点は、日本国内とは異なる海外諸国の法制度や規制にも精通していなければならないという点です。

日本国内のM&Aでは、適用されるのは日本の法制度や規制のみです。

海外諸国のルールを考慮する必要はありません。しかし海外M&Aの場合には、日本国内のルールだけではなく、相手国の法制度や規制についても精通していることが求められます。

日本人としての常識や当たり前だと考えられているルールでも、海外では全く通用しないことは少なくありません。

例えば海外には、国の政策として外貨規制を行っている国があります。

この場合、外国の企業が海外M&Aを希望しても、規制によって実現する可能性が難しくなることは少なくありません。

また、ルールを無視した強行な海外M&Aでは、場合によっては処罰の対象になるケースもあります。注意しましょう。

気を付けること その4「高値掴みが多い」

海外M&Aデューデリジェンスにおける4つ目の注意点は、高値掴みを避けるという点です。

詳細なデューデリジェンスを行わずにM&Aをすすめると、実態よりも高値で買収する結果になりかねません。実際にそういったケースが多々見られるのも事実です。

海外案件だと、適正価格を見極めることは簡単なことではありませんし、デューデリジェンスでリスクを全て洗い出せないことも多いものです。

リスクが分からないと、適正価格よりも高額な契約価格を吹っ掛けられてもそれが不当だと気付くことは難しいでしょう。

また、相手側の言い値で契約する結果にもなりかねません。

情報不足による高値掴みでは、海外M&Aでは最も避けたい注意点です。

仮に契約までこぎつけたとしても、その後の経営が困窮するリスクが高くなってしまいます。

気を付けること その5「為替レートの変動」

海外M&Aデューデリジェンスで5つ目に気を付けたい点は、為替レートによる価格の変動を考慮するという点です。

契約額が大きくなればなるほど、為替レートのわずかな変動によって契約金が大きく変わります。

予算に制限がある海外M&Aの場合には、為替の変動にも注意しながらデューデリジェンスを進める必要があるでしょう。

気を付けること その6「信頼できる機関の確保」

海外M&Aにおいては、現地の信頼できる機関を持つという点がとても大切です。

信頼できるパートナー企業やコンサルタントがいれば良いのですが、そうではない場合、海外M&Aに先立って現地法人を設立し、そこで海外M&Aに向けて現地での情報収集を行ったりする必要もあります。遠く離れた海外から収集するよりも、現地で収集したほうがはるかに正確な情報を集められるからです。

デューデリジェンスにおいても、現地法人があるかどうかによって、リスクをどこまで洗い出せるかという点が変わります。

失敗しない海外M&Aをするなら、デューデリジェンスに時間と人材を投入し、できる限り詳細な調査をする事が必要不可欠です。

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