海外M&AのPMIで気を付けるべきこと

海外M&Aのポストマージャーインテグレーション(PMI)では、統合による相乗効果を低下させないためのプランニングやプロセスが必要です。

気を付けるべき注意点はたくさんあるので、チームを作って取り組むのが良いでしょう。

PMIは海外M&Aにおける最重要プロセス

ポストマージャーインテグレーション(PMI)は、M&A契約が成立した後の統合プロセスのことです。

このプロセスに重点をおくことによって、M&Aで想定した相乗効果を実現することができますし、買う側と売る側のどちらにとってもプラスの効果が生まれます。

このポストマージャーインテグレーションは、日本国内企業同士のM&Aでも、海外M&Aでも変わることはありません。

しかし日本企業の多くは、M&Aにおけるポストマージャーインテグレーションに重点をおいていません。M&A契約成立までのプロセスには力を入れるけれど、成立後の統合プロセスには大きな力を注がないというケースが多く見られるのです。

しかし日本国内企業同士のM&Aでは、それで何とかなっていたものが、海外M&Aとなると話は変わります。デューデリジェンスで見えなかった「実際に触れてみなければわからないこと」が国内のそれとは比較にならないくらい多いからです。

では、実際に海外M&AのPMIプロセスにおいては、どんな点に注意をしたり気を付けることが必要なのでしょうか。

気を付けること その1「現場の混乱を理解する」

海外M&Aにおけるポストマージャーインテグレーションで気を付ける1つ目の点は、譲渡企業の現場が不安定な状態になっていることを理解するということです。

M&A直後には、国内同士のM&Aであっても譲渡企業に勤める社員のモチベーションや経営状態がとても不安定となっているものです。

外国企業によって買収された海外M&Aでは特に、不安定な状態が起こりやすくなります。

例えば、これまでハンバーガーとホットドッグがメインだった社員食堂のメニューが、ある日突然、牛丼と焼き魚定食に入れ替わったら、どうでしょう?それまでそこで働いていた社員からは、当然のように反発が起こるのではないでしょうか。

しかし、前もって社員に新しいメニューの一覧表が配布されて既存の人気メニューが温存されると分かっていたり、また新メニューの試食会が開催されるなどして新しいメニューを受け入れやすい環境が整備されれば、それまで親しみのないメニューが社員食堂に登場しても、反感を持つ人は少なくなるでしょう。

統合後の不安定さを解消するためには、将来的なビジョンやプランニングを社員全員に浸透させることが大切です。

そうすれば社員のモチベーションを高めることができますし、社員流出や作業効率、業務効率の低下を防げるでしょう。

気を付けること その2「社員同士の摩擦」

海外M&AのPMIにおける2つ目の注意点は、社員同士による摩擦が起こりやすいという点です。

M&Aによって譲渡企業に新たな人材が投入されるケースも少なくはないでしょう。

その中で異なる文化や風習を持つ国の社員が同じ職場で働く際には、どんな場合でもある程度の摩擦や衝突が起こることが想定されます。

日本には、社会人なら誰もが知っている常識や、多くの人が知っている暗黙のルールややり方があるものです。海外企業にも、私達が知らない独自のルールややり方があるでしょう。

例えば日本企業には、報連相(報告、連絡、相談)のルールがあります。

これは、誰がどんな業務に取り組んでいて、進捗はどうなっているのかという点を上司に報連相するというものです。その結果、上司は職場の状態を把握しやすくなるという効果が期待できます。

しかし、もしかしたら海外の企業では、報連相は浸透していないかもしれません。

それどころか、個人プレーが良しとされる企業文化という可能性も考えられます。

そうした異なる文化が同じ職場環境で働くためには、企業が目指す目標やゴールに向かって、社員教育や研修をする必要があるでしょう。お互いに文化やルールを理解し、良い所を積極的に取り入れることで、海外M&Aの相乗効果を最大にすることも可能です。

ポストマージャーインテグレーションにおいては、摩擦や衝突を見据えて、具体的にどんな対策を講じるのが良いのかという点を検討するプロセスがあります。

気を付けること その3「想定外に備える事」

3つ目に気を付けたい点は、想定外のリスクに備えるという点です。

海外M&AのPMIではプロセスが多く、また、国際間の間h数の違いから、買収側にはあらかじめ想定できないレベルのイレギュラーが起こり得ます。

たとえハイレベルな専門知識を持つ人材を用いて万全の準備をしたとしても完全に取り除くことは不可能でしょう。

この場合の対策としては、万全の体制でポストマージャーインテグレーションに備えるだけではなく、そもそも「想定外は発生するのだ」という前提でトラブルにも迅速に対応できるマネージャーまたはチームを待機させることです。

打たれることが分かっているパンチであれば、たとえ受けてもノックアウトされないということです。

気を付けること その4「買収側の意思を一方的に押し付けない」

海外M&Aのポストマネージャーインテグレーションにおける4つ目の注意点は、統合後のルール決めにおいては、買収側だけに一方的に寄せてはいけないという点です。

PMIでは、経営や業務、社員の意識の摺り寄せを行う作業が必要です。

しかし、買収側だけに全てのやり方を寄せるのでは、譲渡企業の社員にとっては意識低下につながってしまいます。

基本の軸は買収側としても、できるだけ両企業から良い部分を取捨選択抽出することが、社員も経営者もモチベーションを維持できる環境づくりにつながります。

また、海外M&Aによる相乗効果を最大限にすることができるでしょう。

アメリカ進出をもっと簡単に…「ターンキーM&A」

今も人口増加を続けるアメリカ市場は大変魅力的。日本からのアメリカ企業M&Aも加速を続けています。

しかし国際間の取引には国内では想像できないようなリスクも存在するため、大きなハードルを感じている企業も少なくありません。「ターンキーM&A」は、そんな国際間ギャップを低減し日本企業のアメリカ進出をより身近なものとします。

海外進出時の異文化リスク、人材リスク、継承リスクなど様々な問題を低減します。
今後の事業戦略の選択肢のひとつとしてお留め置きください。