M&Aで有効な「アーンアウト」とは?

M&Aにおけるアーンアウトは、買収金を分割払いにするという買収方法です。

メリットとデメリットがあるものの、売却企業に条件を付けることで、買収企業のリスクを最小限に抑えることができます。

海外M&Aでも良く使われる手法です。

アーンアウトって何?

M&Aにおけるアーンアウトとは、買収金の支払を条件付きで分割払いにするという買収方法です。

一般的なM&Aでは、買収金は一括払いとなります。

買収金の金額を決める際には、デューデリジェンスなどのリスク調査を行って決定するものの、統合後に予期せぬ事態が起こることはありますし、M&Aの際に想定した相乗効果が得られないという事態が起こることもあります。

もしも買収金を一括で支払った場合、不測の事態が起こっても返金してもらうことはできません。

これは、買収企業にとっては、適正価値でのM&Aという点においてはリスクとなるでしょう。

しかしアーンアウトでは買収金は分割払いとなり、支払額に関しては条件をつけます。

例えば、売却企業の利益がXX年後にXX億円を達成したら、買収残金に利益を上乗せして支払うといった条件を付けます。

M&Aから一定期間が経った時点において、買収価格を調整できるという点が、アーンアウトの大きな特徴です。

LBOとは異なる

アーンアウトは、レバレッジドバイアウト(LBO)とは異なります。

LBOは、買収費用を売却企業が融資を受けることで調達するというもので、買収金の支払いは一括です。

アーンアウトは、買収費用は買収企業が準備をするという点でLBOとは異なりますし、一括払いではなくて分割にするという点でも異なります。

アーンアウトを用いる利点

買収企業にとってのメリット

アーンアウトは、買収企業にとってはM&Aによってかかる買収金を一括ではなくて分割払いにできるというメリットがあります。

一度に出ていく出費を少なく抑えられます。

また、条件付きの分割払いにすることで、M&Aの前には予測できなかったリスクを回避できるというメリットもあります。

リスクについては統合前にデューデリジェンスで調査しますが、調査で洗い出せないリスクが存在するケースは少なくありません。

アーンアウトを適用することにより、こうしたリスクによる損失を回避できます。

売却企業にとってのメリット

アーンアウトは、売却企業にとってもメリットがあります。

前述したように買収企業はアーンアウトを是非とも盛り込みたいと考えます。多少多く代金を払うことになったとしてもです。

つまり、売却企業は通常のM&Aよりも多くの買収金を受け取れる可能性があるという点です。

M&Aによる相乗効果が功を奏せば、これまでよりも経営利益を多くすることは可能ですし、キャッシュフローも改善すると考えられます。

それを実現することで、当初想定していた買収金よりも多く受け取れるのですから、売却企業にとっては大きなモチベーションにつながるでしょう。

アーンアウトを用いるデメリット

買収企業にとってのデメリット

アーンアウトには、メリットがある一方でデメリットもあります。

買収企業にとってのデメリットは、実際の手元資金以上の買収もできてしまうが為に、失敗したときのリスクが大きくなってしまうことです。

アーンアウトは、ベンチャー企業のM&Aに多く用いられる買収方法で、売却企業の現在価値よりそのポテンシャルに投資をすると考える買収企業が多く存在します。

将来性を見込んで現在価値以上の価格で買収したけれど、思ったように伸びなかったり、期待したほどの利益が出ないといったケースもよくあります。

余裕がある資金計画の場合はデメリットとはならないことですが、一時金が少なくて済むが故に許容以上の投資をしてしまうことはビジネスの世界では決して少なくありません。

売却企業にとってのデメリット

アーンアウトは、売却企業側にとってもデメリットがあります。

それは、代金を一度に受け取ることができないリスクがあるという点です。

一般的には、M&Aの代金は一括払いなので、引き渡し時にまとまったお金を受け取ることができます。その後万が一売却企業の経営状況が傾いたとしても、買収金の返金を迫られることはありません。

しかしアーンアウトで「代金総額を引き上げる代わりに売却後の経営条件を付した場合」など、売却後の経営状態如何によってかえって売却金額が目減りする可能性もあります。

また最悪の場合、買収企業の破綻により買収金を受け取れないなんて可能性もあります。

売手に同意してもらうためには

M&Aでアーンアウト条項を付けることは、売却企業よりも買収企業に大きなメリットがあります。

買収側はアーンアウトが欲しい、売却側は一括払いが欲しい、というケースはよくあります。特に、すでに成長率が右肩上がりとなっている企業は、すんなり同意してもらえるということは少ないでしょう。分割にしたことで付加できる代金の割合が少なくなってしまう為です。

現在はまだ規模が小さいけれど、今後の成長に期待するという売却企業では比較的交渉しやすいです。現在価値に対してより多くの代金を付加してあげることが出来る為です。

統合後の経営ビジョンを共にすることが必須

売却企業にアーンアウト条項を掲載することに同意してもらうためには、 必ずしもアーンアウトが売却企業にとってメリットとなるわけではないという点を、理解し交渉に臨まなければいけません。

統合後のビジョンやプランニングで両者が納得することが必要不可欠なのです。

売却企業の今後の経営状況が、売り手側の報酬に関わってくるわけですから、M&Aにより具体的にどんなシナジーがあるのかという点を明確にし、売却企業が営業利益を伸ばせる環境を作ることで、売手に同意してもらえる確率は高くなります。

海外M&Aでも使えるの?

アーンアウトは、海外M&Aでも良く用いられています。

海外M&Aでは、統合後も売却企業の経営は引き続き売却企業に任せるケースが多く、売却企業にとっても買収企業にとってもウィン・ウィンな関係を築ける傾向にあります。

アーンアウトは、日本国内企業とのM&Aよりも外国企業とのほうが適用しやすいM&A手法と言えるでしょう。

アメリカ進出をもっと簡単に…「ターンキーM&A」

今も人口増加を続けるアメリカ市場は大変魅力的。日本からのアメリカ企業M&Aも加速を続けています。

しかし国際間の取引には国内では想像できないようなリスクも存在するため、大きなハードルを感じている企業も少なくありません。「ターンキーM&A」は、そんな国際間ギャップを低減し日本企業のアメリカ進出をより身近なものとします。

海外進出時の異文化リスク、人材リスク、継承リスクなど様々な問題を低減します。
今後の事業戦略の選択肢のひとつとしてお留め置きください。