失敗しない為のいくつかのカギ

海外M&Aに関して近年メディアで取り上げられることが増えてきています。

このビジネス手法が有するメリットとして「短期間で事業規模を大きく成長させることができる」「ポテンシャルの高い販路や事業分野をスピーディーに獲得できる」といった点が取り上げられており、その魅力に心を奪われる事業者や経営者は少なくありません。

とはいえ、海外M&Aは打ち出の小槌でも、魔法の杖でもないということを覚えておくのは重要なことです。

夢物語ではなく、何がハードルなのかなど現実的な場面を考えることで、数多あるメリットの享受も現実味を帯びてくるのです。

海外M&Aはデリケートなビジネス手法

グループ企業による完全子会社化や統合が行われる場合、事前に多くの折衝や調整が可能であり、ある程度社風も似ていることから手続き完了後の軋轢というものは比較的少ないとされています。

一方、海外M&Aは社風や経営スタイルだけでなく、歴史的背景や文化そのものがまったく異なる企業同士の結びつきとなるため、合併後も社員間に摩擦や軋轢が残るというケースは珍しくありません。

敵対的買収を行った場合は特にそうです。

社内のコミュニケーションが円滑にいかないと、当然ながら業務遂行に支障をきたすことになり、企業の業績にもネガティブな影響が及ぶことになります。

結果として、多大の資金を投入したものの、M&Aがほとんどシナジー効果を生み出すことなく失敗に終わったという事例はとても多いのです。

ですから、そもそも海外M&Aには相応のリスクがあり、非常にデリケートなビジネス手法であるということを銘記しておくのは賢明と言えるでしょう。

海外M&Aで失敗しないためのカギ

調査は徹底的に

まず、どんなケースでも言えること。海外M&Aで失敗しないためのカギは「徹底的な査定」です。

企業を買収するわけですから、莫大な資金の投入が必要となるのは間違いありません。

とはいえ、買収対象となる会社の企業価値を見誤らないことは大切です。

特に、買収を積極的に受け入れようとする会社の中には、損失を隠蔽していたり、多数の訴訟を抱えていたりといったケースが少なくありません。

また、そうした問題を抱えていない場合であっても、できるだけ創業者利益を確保するため、企業の持つ強みや利点ばかりを強調し、本来の企業価値を超える金額を請求してくる可能性があります。

断る決断

デューデリジェンスを徹底的に行った結果、買収予定額と企業の評価額、およびシナジー効果による収益などが当初の想定と異なることや、 法務リスクが介在している場合、企業の持つ特許権・知的財産権などに関して本来の説明とは異なる情報が見つかる場合なども当然あり得ます。

ここで、適切でないと判断されるのであれば、M&Aを見送るというのも決して間違いではありませんし、むしろ非常に重要な行動になります。

これが選択肢にあるからこそ交渉を有利に進めることができるのです。

しかし、ある程度の工数まで進んでしまうと「断る決断」がしにくくなってしまう場合も多く見受けられます。

これには、徹底的なデューデリジェンスや時間をかけた検討で既に多くのコストを費やしてしまっていたり、相手方に対する温情や、自社内及び株主への建前など様々な理由があります。

従業員を注視せよ

「従業員の反応を確認する」というのも海外M&Aで失敗しないためのカギとなります。

M&Aは多くの場合、「基本合意」と「本契約締結」の2ステップで行われます。M&Aに関する基本合意がなされた時点で、買収される外国企業の社員たちがどのような反応を示すのか、という点をしっかりとチェックするようにしましょう。

実際、海外M&Aに関して基本合意が完了した後で労働組合が強く反発し、それに対する市場の反応もあまり好意的ではなかったため、会社の経営基盤が揺らいでしまい、その結果買収予定の企業そのものが存在しなくなってしまったというケースが報告されています。

ですから、M&Aの手法が敵対的であるかどうかに関わりなく、基本合意の前後で海外企業の労働組合などと十分な折衝を行い、サポートを取り付けられるよう尽力することが失敗を避けるための重要なカギとなるのです。

アメリカ進出をもっと簡単に…「ターンキーM&A」

今も人口増加を続けるアメリカ市場は大変魅力的。日本からのアメリカ企業M&Aも加速を続けています。

しかし国際間の取引には国内では想像できないようなリスクも存在するため、大きなハードルを感じている企業も少なくありません。「ターンキーM&A」は、そんな国際間ギャップを低減し日本企業のアメリカ進出をより身近なものとします。

海外進出時の異文化リスク、人材リスク、継承リスクなど様々な問題を低減します。
今後の事業戦略の選択肢のひとつとしてお留め置きください。