買収企業を評価するバリュエーション。その様々な手法を解説

企業価値を数値化するバリュエーションは、M&Aを実施することが適切かどうかを判断するうえで肝要なプロセスです。

純資産をベースとする方法のほかに、将来的な利益を判断材料とするなどの多彩なアプローチ方法が登場しています。

バリュエーションとは

バリュエーションとは、M&Aのプロセスにおいて、買収対象となっている企業の価値を算定し、金額で表記することです。

これにより、買収を行う企業はM&Aへ費やすコストの大まかな目安を把握できることになります。

バリュエーションで主なカギとなるのは、発行済み株式の総額と負債額のバランスです。

負債額には金融機関からの借入金に加えて、発行済の社債なども含まれるでしょう。

バリュエーションの手続きは公平性の観点から、双方の企業と利害関係にない第三者機関へ委ねるのが一般的であり、いずれの企業も算定のプロセスに干渉することは一切認められません。

買収に必要とされるコストの総額がバリュエーションで産出された金額よりも大幅に安ければ、このM&Aは非常にメリットの多い取引であると判断することが可能です。

一方、コストがバリュエーション金額を大幅に上回っている場合には、買収手続きによるデメリットが大きすぎると判断して、プロジェクトそのものを撤回するという判断を下す経営者もいることでしょう。

また、コスト面のみに限って考えれば問題がない場合でも、訴訟を抱えているなどの理由から将来的に企業価値が大きく損なわれると予測される場合には、プロセスを中断するのが通常です。

コストアプローチ

コストアプローチとは、M&Aを実施する時点で企業が有している資産に基づいて価値を算出する方法であり、非常に分かりやすいメソッドとして広く採用されています。

一般的なのは、不動産や有価証券などの有形資産のみを対象として計算する「簿価純資産法」でしょう。財務諸表などの関連書類があれば、比較的短期間で計算が可能というのがメリットです。

一方、有形資産と合わせて特許権などの無形財産も計算対象とするのが「時価純資産法」です。企業として保有している商標も資産とみなすことで、より正確なバリュエーションを行う狙いがあります。

その他に、対象となっている企業が保有する資産をすべて一から取得し直す場合、どれほどのコストがかかるかという指標で判断する「再調達原価法」という手法も人気です。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、企業が将来的にどれほどの利益やキャッシュを確保できるかという視点に基づいて実施するバリュエーションのことです。

具体的なメソッドとしては「DCF法」と「配当還元法」の2つがあります。

DCF法

DCF法とは、企業が生み出すと予想される利益から事業運営に必要とされるコストを差し引いて計算する方法です。

短期間で高い利益を得られると判断されると、企業としての評価値は非常に高くなります。

一方、利益は大きいものの、それを手にするまでの期間も長い場合、それに伴って設備投資や運転資金などのコストも当然大きくなりますから、企業価値はやや低くなってしまうのです。

配当還元法

配当還元法とは、名前が示す通り、株主に対してどれほどの配当を行っているかという指針に基づいて評価する方法です。

配当が大きくなればなるほど、評価値は高くなる傾向にあります。

ただし、企業として保有する資本金が十分にない場合には、どれほど高配当を行っていても評価が上がることはありません。

また、株主配当を数年連続で出すことができていなかったり、損失が大きくなっていてこれから当分の間は配当が期待できなかったりする場合にも、企業としての評価は低くなってしまいます。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、市場で取引されている株式の価格を基準として企業の価値を算定する方式のことです。

具体的には「市場株価法」「マルチプル法」および「類似取引比準法」の3つがあります。

市場株価法

市場株価法は名前の通り、対象となる企業が上場している株式市場においてどれほどの価格で取引されているかを判断材料とするものです。

1か月から3か月程のテスト期間を設定し、その間の推移を見たうえで終値の平均的な価格を採用するのが一般的となっています。

マルチプル法

買収対象となっている企業が非上場の場合に用いられるのがマルチプル法です。

これは、対象となっている企業と事業内容や事業規模がある程度類似している企業を代替モデルとして採用し、その株価を基にして企業価値を算定するというものです。

もちろん、まったく同じ企業はないので、財務状況などに応じて適宜数値の調整が行われます。

類似取引比準法

類似取引比準法も、非上場企業のバリュエーションに用いられる手法です。これは、類似したM&Aの事例を参考にしつつ、企業価値を計算するというもので、事業規模が大きい企業を対象としてバリュエーションを実施する際に比較的多く用いられています。

海外案件のバリュエーション

海外の企業を買収するクロスボーダーM&Aでは、バリュエーションの手法として、純資産に注目したコストアプローチが広く採用されています。

ただし、日本円と現地通貨の間にある国際的な信用力の違いや現地の情勢など、幾つかのリスク要因を数値化して割引くというのが一般的です。

アメリカ進出をもっと簡単に…「ターンキーM&A」

ターンキーM&Aとは、海外M&A買収後の煩雑な継承・人材・法務・会計・インフラさらには継続的なマネジメントまで全て整えられた商品サービスのことです。

海外進出時の異文化リスク、人材リスク、継承リスクなど様々な問題を低減します。
今後の事業戦略の選択肢のひとつとしてお留め置きください。