M&A時にも多用されるエスクロー。その利点とは

エスクローとは、M&Aのプロセスを進める際に第三者を仲介役として設定するビジネス手法です。

エスクローを利用することには取引全体の透明性が確保されるなど複数のメリットがあり、多くの金融期間がこのサービスを提供するようになっています。

エスクローとは何?

エスクローとは、M&Aや不動産取引において、売買を行う当事者同士の間に中立的な立場の第三者を置くことを指しています。

語源となっているのは、フランス語で「巻物」を意味する「Escrow」という単語です。現代では、取引に関連した重要な書類を取引が完了するまで、金融機関などに管理してもらうというサービスのことを意味するようになりました。

エスクローサービスを提供する仲介業者のことをエスクロー・エージェントと呼びます。M&Aでは、買収資金の一部もしくは全部をエスクロー・エージェントが管理し、取引が無事完了した時点で、売り手側の企業へ支払いが行われるようになっています。

用いるメリット

エスクローを利用するメリットは「買収手続きの安全性が担保される」という点です。

エスクロー・エージェントは買い手と売り手双方の手続きを注視しており、どちらかが契約した内容を適切に履行していなかったり、契約書の内容に虚偽があったりする場合には、それをすぐに指摘して、M&Aの手続きを継続するかどうかの確認を行います。

どちらかに契約不履行が確認された場合、M&Aのプロセスが破棄されるということも珍しくありません。

このように、買収手続きを逐一チェックする機能が存在するため、安全にプロセスを進めていくことができるわけです。これは、当事者双方にとって大きなメリットということができるでしょう。

「買収資金を安全に管理できる」という点もメリットです。

エスクローサービスを提供する金融機関と信託契約を結んで資金を預ける場合、たとえ金融機関が倒産したとしても、預け入れた資金に関しては必ず保全されます。ですから、買い手側の企業としては安心して運用・管理を依頼することができるでしょう。

一方、売り手側からすれば、エスクロー・エージェントへ預け入れが行われたということは、取引先に買収の意思があるということの明確な証明となります。

なぜM&A時に利用される

M&Aのように膨大な資金が関連するディールでは、すべてのプロセスにおいて、取引の安全性および透明性を確保することが不可欠です。

そのためには、資金の管理に加えて、契約書や登記内容、スキームのチェックなどが可能な完全中立の第三者機関、つまりエスクロー・エージェントが必要とされるわけです。

また、多くのエスクロー・エージェントはM&Aに関する専門的な知識と豊富な経験および実績を有していることから、仲介者としての働きだけでなく、アドバイザーとしての役割が求められるケースも珍しくありません。

エスクロー利用の方法

エスクローの利用方法には「信託契約」と「銀行口座」の2つがあります。

信託契約

信託契約は、エスクロー・エージェントへ資金を預け入れて信託による運用・管理契約を結び、契約時に設定した条件が満たされた時点で売り手側に資金を払い出すというシステムです。

この方法は先述の通り、資産の安全性がしっかりと確保されており、エスクロー・エージェントや売り手側の企業が倒産したとしても、その影響を受けるリスクがほぼありません。

ただし、信託契約は手続きが完了するまでかなりの時間を要するという点には注意が必要です。

また、信託契約に基づいてエージェントへ手数料を支払わなければならないということも覚えておきましょう。手数料は取引額の1.0%前後が相場となっています。

銀行口座を利用したエスクロー

銀行口座を利用したエスクローとは、買い手と売り手双方の企業が連名で金融機関に口座を設け、買収の資金をそこで管理するという方法です。

信託契約とは異なり、細かな規約を設定する必要がほとんどありません。また、仲介する金融機関へ支払う手数料もわずかです。

口座残高はどちらの企業も適宜確認できるので、透明性が確保できるというのも魅力でしょう。そのため、買い手と売り手の企業がすでに強固な連携関係にあり、M&Aをスピーディーに進めたいというケースで広く採用されています。

ただし、口座を設けた金融機関が破綻してしまった場合、口座内の資金は必ずしも保証されないというリスクが伴うことを心に留めておきましょう。

アメリカでのエスクロー

アメリカではM&Aでエスクローを利用することが一般的になっており、大企業同士のM&Aだけでなく、中規模企業の案件でも広く採用されています。

近年、海外資本の企業が数多く参入しているアメリカ市場では、買い手側の企業が用意した大切な資金をどのように保全するかという点が重視されており、多くの金融機関が補償の付帯したエスクローサービスを提供するようになっているのです。

日本企業向けのサービスとして、日本語のM&A向け専任スタッフを常駐させる銀行や金融機関も増えているので、現地企業とのM&Aを介してアメリカへの進出を目指している企業にとっては良い環境が整っているといえるでしょう。

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