M&Aにおける秘密保持の重要性

M&Aにおいては、秘密保持(CA)を徹底するため、最初に秘密保持契約書(NDA)を作成します。
情報が漏洩してしまうと、譲渡企業にとっては多くの損失が出てしまい、M&Aそのものにもマイナスの影響が出かねません。
目次
秘密保持(CA・NDA)はM&Aにおける大前提の条件
M&Aにおいては、当事者はもちろんのこと、関わる全ての人に秘密保持(CA:Confidential Agreement)が求められます。ほとんどの場合M&Aのプロセスがスタートした際には、NDA(Non-Disclosure Agreement)という秘密保持契約書を最初に締結しなければいけません。
なぜ秘密保持が重要かというと、情報が漏洩してしまうと、売手企業にとっては大きな損失が出てしまうからです。売手企業にとっては、関係者や取引先からクレームを受ける可能性が懸念されますし、交渉を進めるうえで妨げとなる障害が出る可能性もあります。最悪の場合には、交渉そのものがとん挫してしまうリスクもあるでしょう。その場合、金融機関や取引先から信用を失った売手企業にとっては、経営そのものを存続することすら危うくなってしまうかもしれません。
具体的にどんな損失があるか?
万が一、M&Aに関する情報が漏洩した場合、どんな損失やマイナスの影響が想定されるのでしょうか?
従業員への影響
1つ目には、従業員への影響があります。会社が別の企業へ譲渡されるかもしれないという噂が立つと、従業員の士気が下がります。従業員による反対運動が起こったり、離職者が増えたりといった事態も起こりかねません。優秀な人材が流出してしまうと、M&Aの価値そのものにも影響があります。
顧客への影響
2つ目に、譲渡企業のサービスを利用している顧客への影響も懸念されます。顧客の間に不安が生じると、利用者の低下につながります。それが、企業利益の低下を引き起こしてしまうかもしれません。
譲渡企業や金融機関への影響
3つ目として、譲渡企業と取引のある金融機関に対しても、マイナスの影響が出てしまうことがあります。M&Aについてのノウハウや経験が豊富なメインバンクなら、M&Aに対して理解を示すかもしれません。しかし、そうでない場合には、取引や融資の打ち切りや貸し渋りといった事態が起こりかねません。そうすると、譲渡企業の経営や資金繰りが悪化しかねないのです。
情報漏洩を防ぐための対策方法
M&Aでは、いつどこから、どんな風に情報が漏洩するか分かりません。譲渡企業が受け取った請求書から漏洩したというケースもあります。そのため、M&Aのプロセスにおいては、日常業務の細かいところまで最新の注意を払い、守秘義務を徹底する必要があるでしょう。それでは、具体的にはどんな点に注意したら良いのでしょうか?
電話に注意
1つ目は、企業同士の連絡には、社内の固定電話は使わないという点があります。連絡の手段としては、社長が個人で持っている携帯電話などを使うと良いでしょう。また、社内のデスクなどに置いたメモなども情報漏洩のきっかけとなるため、メモの保管場所には注意しなければいけません。メモや書類を捨てる際には、シュレッダーにかける慎重さも必要です。
メールに注意
2つ目は、電子ファイルの管理を厳重にするという点です。パソコンへログインする際のパスワードと、メールアドレスのパスワードが同じというのはNGです。パスワードは必ず変えて、他社が不正アクセスできないように注意しましょう。連絡事項に使用するメールアドレスは、M&A用に別のアドレスを使うのが安心です。また、直接的な内容はできるだけメールには残さないように、注意したほうが良いです。さらに、パソコンに保管するファイルには必ずパスワードを設定することも大切です。
会談に注意
3つ目は、打ち合わせの場所には自社は使わないという点です。来客の記録などから、M&Aの可能性を模索する人がいるかもしれませんし、誰がどこから見ているか分かりません。よからぬ噂を立てるきっかけづくりをしないという点でも、打ち合わせにはお互いの企業ではなく、ホテルの一室などを準備するのが安心です。