中国の恒大集団の件は、アメリカ経済にどう影響するのか?
中国の恒大集団による債務不履行は、米ドル債の部分でアメリカへ影響が出るかもしれません。
しかし、市場全体に占める恒大集団債の割合は少ないため、大きなダメージを懸念する専門家は少ないです。今後の中国マネーに注目が寄せられています。
※本記事は2021年12月時点で調査されたものです。
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中国のトップ企業が債務不履行でデフォルト
中国有数のコングロマリットである恒大集団(チャイナ・エバーグランデ)は、中国国内における不動産開発業者です。深圳(しんせん)を拠点とし、国内31の省及びその市町村すべてを広く網羅する大企業で、これまでに234都市で798ものプロジェクトを展開してきました。国内の不動産開発においてはトップ3とも呼ばれているほどの規模を誇り、近年では不動産開発部門だけでなく、金融や電気自動車、文化観光やヘルスケアなど、多種多様な分野へも事業展開しています。
恒大集団が持つ債務は、合計で3,000憶ドル相当と言われています。2021年12月に入り、フィッチ・レーティングスが恒大集団の債務不履行を発表しました。これによって、恒大集団社と関連する子会社は、「制限付きのデフォルト」というステータスまで引き下げられました。
恒大集団の債務不履行がアメリカ経済に与える影響とは?
恒大集団に詳しい専門家によると、恒大集団社の債務不履行によってアメリカが影響を受けるダメージは、米ドル債の約200億ドル程度です。数字だけを見ると大きな金額ですが、債券市場の規模を見ると、その割合はごくわずかです。債券市場は、アメリカ市場だけでも46兆ドルあり、世界規模にすると119兆ドルにも上ります。中国国内ではトップ規模を誇る恒大集団ですが、この企業が抱えていた米国債は、アメリカ市場全体のわずか0.04%程度にすぎません。全くダメージを受けないことはないものの、アメリカ経済自体が大きなダメージを被るほどの規模ではないだろう、というのが多くの専門家の見解です。
政府主導のリスク管理
恒大集団の債務不履行によって、この企業はデフォルト認定されました。企業規模が大きく、国内はもとより、諸外国へも多かれ少なかれの影響が出ることを考え、既に中国は政府主導でリスク管理対策を発動しました。恒大集団が本社を構える広東省では、既にリスク管理委員会を設置して、債務リストラを開始しています。政府の監視指導の下に秩序だった債務リストラを進められるなら、恒大集団は今後も事業を続けられるかもしれません。しかし、上手く進めることができなければ、清算という結末を迎えることも十分に考えられます。
債務不履行となった恒大集団は現在、個人投資家への融資返済を優先的に行っています。これも中国政府からの指導に基づいた対処の一つですが、国内の投資家を優先することで、結果として、海外投資家は大幅な減免を余儀なくされるリスクが懸念されています。
ちなみに、中国政府はこれまで国内経済政策の一つとして、債務を抑制する方針を取ってきました。今回の恒大集団デフォルトは、債務不履行による結果です。そのため、政府の政策と反するという点で、政府による恒大集団の救済措置は期待薄と言えます。
中国の金融機関の頂点に君臨する中国人民銀行(PBOC)では、中国政府が介入することなく、恒大集団に影響や問題は自然に解決されるだろうと予測しています。恒大集団デフォルトの影響によって、同業他社や信用が低い企業への貸し渋りが起こるコンティジョンについても、懸念はそれほど大きくありません。
中国マネーはアメリカを狙っている
不動産業界において、中国マネーが向かう先はアメリカと日本だと考えられています。中国市場と比較すると、日本市場は健全性や安定性が高く、投資しても破綻のリスクが少ないという点で、大きな魅力となっています。一方で、アメリカの市場は不動産バブルが継続しており、投資をすれば大きなキャピタルゲインが期待できる点で、魅力的な市場です。
恒大集団のデフォルトが、アメリカの不動産市場へ大きな影響が出ると考える専門家は多くありません。しかし、金融の世界はグローバルかつ複雑に絡み合っているため、今後インフレが続くかもしれないアメリカにおいてどのような影響があるのか、注目されています。