インフレがアメリカ経済を襲っている

コロナ禍の影響によって、経済活動が世界的に停滞しました。2021年に入って経済活動が回復する兆しを見せる中で、アメリカではボトルネックによるインフレが深刻化しています。ただし、一時的な現象だという専門家の声もあります。

コロナ後に待っていたものはインフレ

2020年の新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、アメリカ国内ではさまざまな業界や企業が大きなダメージを受けました。ワクチン開発や接種の普及に伴って、経済は少しずつ上向きに改善していますが、今度は深刻なインフレが加速しています。2021年松野消費者物価指数を2020年の同時期と比較すると、CPIが7%近くも上昇しており、これは過去40年間の中で最大幅となっています。

ちなみに、現在と近いレベルの価格上昇が最後に起こったのは、1982年のレーガン政権だった頃です。当時の政府は国内の供給危機と支出増加という2つの問題を抱えており、それがインフレに拍車をかけてしまいました。

現在のインフレは、40年前のインフレとは事情が異なります。コロナ禍によって人や物の移動が制限されたことで、サプライチェーンがダメージを受け、その結果として、国内での需要と供給のバランスが崩れていることが原因ではないでしょうか。

コロナでインフレが起きたメカニズム

2020年にコロナウィルスが世界的に感染拡大すると、どの国でも渡航制限や入国制限を敢行しました。どの時期にどのレベルで人とモノの動きを遅くしたのかという点は各国によってさまざまですが、アメリカも例外ではなく、人やモノの輸出入が制限されました。

国内で生産をせず、海外からの輸入に頼っていた商品や製品、モノづくりに必要な原料や材料などのパーツが入ってこなくなることによって、生産ラインが止まり、モノが不足する事態を引き起こしたのです。

アメリカでは、素早いワクチン普及などの影響もあり、2021年に入って経済活動が改善してきました。その結果、ボトルネック現象が起こります。コロナ禍においては、需要も供給も低下していましたが、経済回復によって需要が高まり、供給が追い付かなくなってしまったわけです。少ない数のモノに対して多くの人が欲しいと思うわけですから、商品の値段が高騰してインフレを引き起こしました。

専門家は重要視していない

インフレが発生すると、モノやサービスの価格が高騰することによって、人々の生活が圧迫されてしまいます。このインフレがどのぐらい続くのか気になるところですが、経済学者をはじめとする専門家の中には、インフレは一時的なものだから重要視する必要はないと考える人もいます。専門家の説によると、インフレとは長期的には過去にも何度も起こっている現象の1つで、大きな政策を打たなくても自然に安定することが多いとのことです。

現在起こっているインフレについては、インフレがいつまで続くのかを懸念して、経済的な対策を講じようという声も出ています。例えば、世界の経済を動かすほど大きな影響力を持つアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が、インフレ解消のために、金利をゼロよりも若干高めに設定するという策を検討しています。しかし、経済学者によると、そうした政策はインフレにとっては「火に油を注ぐ」結果となるリスクがあるため、何もせずに自然収束するのを待った方が良いという話です。

アメリカでは国内の石油価格調整政策がスタート

アメリカでは現在、インフレによって、多くのものやサービスが値上がりしています。その中でも車社会であるアメリカ国民を直撃しているのは、石油の価格高騰かもしれません。

バイデン政権では、この石油価格の高騰を少しでも以前に近い状態へと引き戻すべく、国内に存在する戦略備蓄原油の放出をスタートし、中東の産油国へ原油の増産を依頼するなどの対策に乗り出しました。これらの対策によって、今後は少しずつ石油価格は低下すると期待されています。

しかし、一朝一夕に価格が下がるものではなく、時間がかかるという点で、インフラへの懸念に加えて、国民のイライラは募る一方となっています。