コロナの影響で、日本企業にとってアメリカM&Aはお買得市場になる?
ポストコロナに、事業成長を目指す多くの企業はクロスボーダーM&Aを検討しています。
特に、M&Aに関する理解が深く、法整備が十分に行われている経済大国アメリカの企業を買収対象として考慮するのは適切なことでしょう。
そんななか日本企業にとってアメリカのM&A市場はお買得市場となるのではという声もあります。
目次
海外への展開を見据える多くの国内企業
日本国内では少子化が深刻化しており、それに伴って労働人口の減少も顕著になってきています。
また、国内の人口が減少すればそれだけ市場の規模も縮小していくため、それが企業の業績にもマイナスの影響を及ぼしているのです。
生産するための人材がおらず、また生産したとしても購入する人がいないという負のスパイラルが、様々な業種において見られてきています。
こうした苦境に対処するため、政府が中心となって海外からの就労者を積極的に受け入れているものの、そこに大きなブレーキをかけたのが新型コロナウイルスと言えるでしょう。
2回の緊急事態宣言によって、国内の各産業は大きなダメージを被りました。
飲食業界を中心として、売り上げの減少に耐えることができず、事業の継続が困難になった企業も少なくありません。
そうした状況下で、事業成長のチャンスを模索する多くの国内企業が、より大きな市場規模を持つ海外への展開を考えるようになったのは当然の流れということができるでしょう。
生産力や市場規模のポテンシャルを考慮した結果、アメリカへの事業展開を目指すという企業が増えてきています。
特に、短時間で迅速かつ効果的に販売網や生産拠点などを手中に収めることができるクロスボーダーM&Aは、多くの企業から注目を浴びています。
アメリカに期待すべき理由
アメリカは新型コロナウイルスの破壊的な影響を最も受けた国の1つです。
とは言え、日本企業がアメリカ進出を目指すべきと言える理由は幾つもあります。
政府が積極的な経済政策を打ち出している
まずは「政府が積極的な経済政策を打ち出していること」でしょう。
アメリカ政府は消費を下支えするための現金給付など、直接的な支援策を複数回実施すると同時に、企業の雇用支援策なども大々的に行っており、コロナウイルスの影響が沈静化した時に向けて粘り強いサポートを続けています。
加えて、国際基軸通貨であるドルが引き続き堅調であることや、平均株価が3万ドルを超える高い水準を維持することに成功しているという点も強みでしょう。
こうした状況を考慮すると、コロナ禍が落ち着いた時に世界経済のリーダーシップを取るのは、やはりアメリカとなることが推測されます。ですから、アフターコロナを見据える国内企業がアメリカに目を向けるのは妥当なことです。
国全体としてM&Aへの理解が深い
アメリカに注目すべきもう1つの理由は「国全体としてM&Aへの理解が深い」という点が挙げられるでしょう。
日本国内で実施されるM&Aは多くの場合、2社の間で事前に十分な検討がなされており、しっかりとした合意のもとにTOBが行われています。事前調整のない、いわゆる「敵対的TOB」に関してはネガティブな印象を持つ人が少なくありません。
また、外国資本の企業が日本国内の企業を買収し、そこから市場へ参入するということに関して、否定的な見方を持つ人もいます。
一方、アメリカではM&Aによるシナジー効果が期待できるかどうかという点により重きが置かれています。
両社の業績向上や雇用増大が見込めるかという視点から考慮して、メリットが多いM&Aであれば外国資本の企業であっても歓迎するケースが多いのです。
ですから、日本の企業にとってアメリカは挑戦しやすい市場ということができるでしょう。
コロナによって日本企業にとってアメリカはお得市場に?
コロナ禍でもアメリカではM&Aが活発
そもそもM&Aというものは、景気が後退したときに活発化するという傾向があります。
日本ではあまり感じられないかもしれませんが、ビジネスにM&Aが根付いているアメリカではその状況も顕著です。
資金繰りに行き詰まる企業が増えて売却案件のラインナップが充実する他、買収側企業も既存ビジネスの停滞から新機軸を求めたくなる状況です。景気後退下では、現状を変えたいという売却希望と買収希望互いのニーズが合致しM&Aは活性化するのです。
実際に最もコロナの影響を受けたであろう2020年も、アメリカではM&A取引件数が増加しています。
つまりアメリカでは『良質な売り案件が増加する』可能性が非常に高いのです。
日本に金融資産が集中
そんな中、日本側の買い手企業にチャンスが生じています。
一見、新型コロナウイルスの影響で日本企業も資金繰り厳しい状況にあるのではないかと思われがちですが、業界によってはそうでもありません。
世界の被害状況に比べたら日本は比較的に軽度な方である。
少なくとも世界の投資家たちは、そう考えているようなのです。
日経平均は2020年3月の16,000円台を底値に、この1年間は正に上がり続け2021年2月現在30,000円を超えています。
また、海外の投資家が東京都心のビルを購入するといった事例も多く、日本の不動産価格も高騰しています。
つまり、いま日本には世界中の金融資産が集まってきていると言えるのです。
-成熟したアメリカ市場でたくさんの売却案件がラインナップされる中、日本企業には潤沢な資金が流入している-
これは正にコロナが引き起こした、日本企業にとってのクロスボーダー買収に有利な状況であるといえるでしょう。