アメリカ人はなぜ会社を売るのか?
アメリカでは、M&Aに対する考え方が日本とは異なり、会社を大きくするための戦略の一つと考えられています。売却理由も多種多様で、大小規模を問わず、企業の買収は盛んです。
起業家や事業家で線引きされている点も、アメリカらしい考え方です。
目次
日本経営者と考えの違い
アメリカでは、小規模なものから大規模なものまで、M&Aが盛んにおこなわれています。
買収や売却理由は幅広く、マーケットの拡大や企業の成長やポテンシャルの創造など、ポジティブな売却理由が多く見られます。特に、小さな企業を大きくするためにM&Aを検討するという売却理由においては、日本企業とは大きく考え方が違います。
日本においては、企業を買収したり売却することに対して抵抗を持つ経営者は少なくありません。例えば、一昔前にあった投資会社がテレビ局を買収する騒動やメディアが「ハゲタカファンド」という言葉を用いていたことなどから見ても分かるように、M&Aに対して敵対的な買収やマイナスのイメージを持つ人は多いでしょう。
しかしアメリカではM&Aの歴史が長く、ビジネス戦略の一つとして選択する経営者がたくさんいます。アメリカにおいては、M&Aは合理的かつ企業成長にスピー度をつけるためのビジネス戦略だと考えられていて、マイナスのイメージを持つ経営者はごく少数です。
企業の売買によって既存のポテンシャルを高めたり、新しいポテンシャルを創造できるというポジティブな考え方が根底にあるため、M&Aに対して抵抗を感じる経営者は、多くありません。
アメリカでは牛を育てるようなもの
アメリカには、会社の規模を大きくしようという習慣があります。
日本では、会社の創立からの歴史を大切にする文化が根付いていますが、アメリカにおいては会社を大きくすることは牛を育てるようなもので、規模を大きくことの優先順位がとても高いという特徴があります。
また日本でM&Aが行わていなかったころから活発に行われていたため、M&A案件の数が小規模なものから大規模なものまで、幅広く揃っています。近年では、ネットでの手続だけで完結できるようなM&Aのサービスも提供されていて、幅広い規模の会社にとって、M&Aとても身近な存在なのです。
起業家と事業家の違い
会社を経営する人は、どんな目的を持っているかによっていくつかの種類に分類できます。その中で「起業家」と「事業家」という分類はM&Aにおいて着目すべきポイントです。
起業家というのは、自ら新規事業を立ち上げる人のことで、スタートアップやベンチャー企業を起こす人を指します。何も基盤がないゼロの状態から最初の1のフェイズを作るのが起業家の役割りです。市場が確定していない不確実性が高いビジネスのリスクを抱えながら事業を進めることから、リスクテイカーと呼ばれることも多いです。ゼロからイチを立ち上げた起業家が、次のフェーズを事業家に任せるためにM&A売却するなどのケースも多く見受けられます。
ちなみに、アメリカに多いフランチャイズ店経営者などは、すでに確立したビジネス市場に対して参入するため、起業家とは呼ばれません。
一方、事業家というのは企業家と呼ばれることが多く、企業の経営を進める人のことを指します。中小企業の経営者などが事業家にあたり、事業を計画して遂行するという一連の作業を行います。企業の規模を大きくするのも事業家の役割りです。M&Aという手法を用い、買収する側にも売却する側にも立ち事業拡大を目指すポジションです。
ちなみに、事業家とよく似たものに実業家があります。実業家は事業家よりも少し狭い範囲を差し、商品やサービスの生産や流通、そして販売まで一連の事業を管理運営する人のことを指します。例えば、農水産業などを営む経営者が実業家にあたり、投機的ではないビジネスが該当します。投機的ではないという点で、M&Aを考慮しないケースが多く見受けられます。
M&Aに関する法整備も
アメリカのM&Aでは、感情や気分などに影響を受けづらく、数字によるロジカルな合併が行われやすいという土壌があります。M&Aに関する法律や規則も細かく決められているため、トラブルが起こりにくくスムーズにM&Aのプロセスを進めやすいという点もまた、アメリカのM&Aにおける特徴です。
M&A案件の数が豊富なため、買手による競争が激しい点も、アメリカにおける売却理由としては多いという特徴があります。
アメリカ企業の買収価格は右肩上がりに高騰を続けていますが、これも競争が激しいために起こる現象だと考えられます。