アメリカの不動産業界への進出
アメリカの不動産業界への進出に際して、その特徴や障壁を解説します。
サブプライムローンの破綻などの問題によって冷えてしまったアメリカの不動産業ですが、その後着実に市場規模を拡大しています。
そのため、M&Aなどの形を採って進出していくのに都合の良い環境となっています。
進出を判断する上で好材料が多いのです。
目次
アメリカの不動産業における市場の規模と特徴
既存住宅(中古住宅)市場
アメリカの不動産業にはいくつかの特徴が見られます。
まず、既存住宅(中古住宅)の取引が多いということです。
地震などの災害被害が少ない地域が多いということもありますし、歴史のある建物に価値を見出す人が多いという文化が関係しています。
不動産業の中でも、既存住宅売買が占める割合が高く、多くの地域で最も高い状況が見られています。
2016年にはこの分野だけでも、1.9兆ドルにまで上昇しています。
右肩上がりの市場規模
市場規模の変化度合いの大きさも一つの特徴となっています。
好景気になると特に不動産投資の熱が盛り上がりやすい傾向にあり、人気が高まると多くの人が多額の投資をすることになります。
2005年にはピークを迎えましたが、サブプライムローンの破綻によって一気に市場が冷えてしまいました。
その後、徐々に回復基調が見られ、右肩上がりで市場規模が伸びている状況が見られます。
高価格帯の住宅よりも中価格帯の住宅の平均額が伸びているという点にも注目できます。
M&Aによって進出をする場合には、こうした分野に投資をすることを一つの戦略として考えることもできます。それだけ投資によるリターンを見込みやすい分野だからです。
日本と異なる点
災害が多い日本では、築年数が経つにつれて不動産価値が下がっていくという傾向が顕著に見られます。
そのため、既存住宅への投資は大都市や大型建造物などにおいてリターンが見込めるものの、地方などのエリアではそれほどメリットがないケースが多いです。
しかし、前述の通りアメリカでは既存住宅への投資、売買が盛んに行われていて、不動産業を営む企業もメインの事業としていることが多いという違いがあります。
歴史のある建物こそ価値が高いという考え方がありますので、不動産評価そのものの視点が違うということは覚えておきましょう。
また、金融デリバティブ商品として不動産関連の商品が非常に多く開発、販売されています。
それにより、単に土地や建物を取引するというだけでなく、不動産業は金融業とかなり近い関係が生まれています。
両方の分野における知識が求められるシーンが多くなりますので、進出する際にはこうした点に注意しておくべきです。
障壁やリスク
アメリカの不動産業における投資やM&Aなどは、すでに日本からも多額の資金が投入されています。
そのため、たくさんの国内企業が進出していて競争が発生しています。
進出に伴うノウハウを得ることについては、すでに先行事例が多いので簡単にできるというメリットはありますが、競争を勝ち抜く必要性が出てきて新たに進出する企業にとっては一つの障壁となります。
また、投資を行っている機関としては不動産ファンドがメインとなっていて、投資額も不動産会社や事業会社などと比べるとはるかに高い水準です。
強い資本力を持って対抗してくる不動産ファンドも、M&Aや投資先によってはリスクとなることも考えられます。
さらに、アメリカの不動産市場はとても活気がありますが、流動性が強い分リスクも生じやすいという注意点が存在します。
的確に投資分析ができないと、大きなリスクを抱えるだけになってしまうことがあるのです。
もたらすベネフィット
アメリカの不動産市況は活発で、市場は成長基調が強く見られます。
そのため、適切なM&Aができれば高い投資効果を得られるのが、進出のベネフィットと言えるでしょう。
特に日本は超低金利状態が続いていますので、資金投入をしやすく国内市場よりもアメリカでの投資の方が効率が良くなります。
さらに、国を分けることによって分散投資をして、リスクを回避できるというのも企業にとってはメリットとなります。
アメリカは日本の4倍ものGDPを持ち、高い経済力を誇ります。
その原動力の一つとなっているのが不動産市場ですので、進出をしてその波に乗るというのは意味があることです。
特に日本は超高齢化社会が進み、人口減少が避けられない状況です。
当然不動産市場も低迷していく可能性が高いです。
一方のアメリカは人口増加が続き、既存住宅の取引にしても新築建造物への投資にしても、将来性があるのが企業にとっては安心材料となります。
同じ資金でも、アウトバウンドによってリスクを回避したり、効率の良いリターンを期待できるアメリカ市場はとても魅力的で、現実的なベネフィットが大きいと言えるでしょう。
今後の展望
サブプライムローンの破綻、リーマンショックによってアメリカの不動産市場は一気に冷えてしまいました。
しかし、本来持つ実質的な価値以上に価値が下がってしまった感があります。
そのため、底を打った後は順調に上昇が続き、その傾向が継続することが考えられます。
そして、より多くの企業が進出を図ることが予測されます。
特に中価格帯の既存住宅投資は、販売価格が上昇を続けている状況でより活気を見せることになるでしょう。
こうした分野に強い地元企業をM&Aによって得るケースも増えていくことが考えられます。