中小企業が抱える課題に対するM&Aによる活路

M&Aに関して、国内を代表するような大企業が数百億円から数千億円の資金を投じて行うものというイメージを持つ人は少なくありません。
確かに、M&Aを積極的に行って事業の多角化に成功している大企業があるのは事実です。
ところが昨今、実際にM&Aを実行している企業を調べてみると、中小企業が関連しているケースが意外と多くあります。
そこには、中小企業の抱える課題やM&Aというビジネス手法の持つ強みが大きく関係しています。
目次
中小企業の抱える課題とは
人材難による競争力の低下
中小企業が大手に対して不利である点は「新たな技術を生み出す力が相対的に弱い」という課題でしょう。
日本では少子化に伴って労働人口が減少しており、その傾向はこれからも継続していくと予測されています。
優秀な新たな人材が限られるという状況の中においては、より就業条件の良い大企業の方がその確保という意味で優位性があります。
優秀な人材となるよう一生懸命育ててきたものの、ヘッドハンティングで大企業へ転職してしまったという苦い経験を持つ中小企業も少なくありません。
このように、絶対的な労働力の不足によって、魅力的かつ新たな技術を生み出す力は中小企業から失われつつあります。
これは日本全体でみられている大きな課題です。
エリア拡大が難しい
「営業エリアの拡大が難しい」というのも中小企業にとって頭の痛い問題です。
先述の通り、中小企業が有する労働力は減少傾向にあるため、魅力的な商品やサービスを作ることができても、それを売り込む営業の人材が不足しており、企業としての戦略が立てられないというケースは珍しくありません。
流通力に関しては、マンパワー・資金力で勝る大企業に圧倒的に分があるのです。
M&Aが中小企業の活路に?
そんな中小企業の課題に対する活路がM&Aにあると言われており、昨今中小企業のM&Aが活発化しているのです。
M&Aにより、新たな人材・技術・商材を得て、更には販路やエリアを拡大することで、大企業に対する競争力を確保しようというものです。
海外M&Aへの期待
そして、前述の理屈はそのまま海外M&Aにもあてはまります。
海外企業の買収に「労働力と新たな営業エリア」を求めるのです。
中小企業が一から海外へ支店や拠点を作り、新規販売網を獲得していくというのは資金面や人材面から見てほとんどのケースで不可能です。
一方、海外M&Aでは、買収先となる海外の企業は既に地元においてある程度の営業力を展開していますから、日本の中小企業は合併後その営業力をそのまま継続して利用することができます。
海外に拠点を設ける時点で相当の資金を投入しなければなりませんから、営業の販路開拓でさらに資金をつぎ込む必要がないというのは、体力が限られている中小企業にとって非常にありがたいポイントということができるでしょう。
M&A市場は活況が続く可能性が高い
コロナ禍によって多くの中小企業は資金繰りが難しくなってきています。
結果として、事業の縮小や計画の見直しを迫られている中小企業は少なくありません。
しかし、このような状況だからこそM&Aは加速するのです。
過去のデータでは不況時こそM&A件数は増加する傾向にあります。これは不況時に、企業同士が生き残りをかけて、再編活動を活発化させるからだと言われています。
そうした統合や適切な買収が積極的に行われることで、中小企業が有する資産価値の高い技術やサービスなどが確実に国内外で継承され発展していけば、国としての競争力もさらに向上していくことでしょう。